廉頗戦の勝利後信は論功行賞で正式に千人将へ。羌瘣が旅立った新生飛信隊は、新たに軍師・貂が加入し破竹の快進撃を繰り広げます。
軍師・貂の初陣が描かれる、第23巻のあらすじや感想を調査しました。
これから初めて読む人、最新刊に備えて復習したい人はぜひ最後までご一読ください。
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- 蒙驁は廉頗と和睦を結び勝利する
- 羌瘣は一時飛信隊を離脱し仇討ちへ
- 飛信隊に軍師・貂が加入する
キングダム23巻ネタバレあらすじ・表紙も確認！
| 作者 | 原泰久 |
| 出版社 | 集英社 |
| あらすじ | 和睦が成立しついに廉頗から勝利した蒙驁。 論功行賞では輪虎を討った功績により信は 正式に千人将へ昇格。羌瘣離脱後千人隊・ 新生飛信隊は連戦連敗で信は千人将権剥奪の 危機へ追い込まれる。見かねた蒙恬が軍師を 紹介し、新たに軍師・貂が飛信隊に加入する。 |
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和睦
「儂らの負けじゃ」と廉頗は負けを認めるが、介子坊はじめ魏兵たちは諦めない。しかし廉頗は、「この戦はもう詰んでおる」と断言。
魏軍を立て直すには時間を要するが、それを許さぬ存在”王翦”を警戒する廉頗。王翦は未だ無傷のまま戦況を見守り、出陣する機会を伺っていたためだ。
更に壁ら新手の秦軍が本陣の援軍に現れると、廉頗は蒙驁に”和睦”を提案する。蒙驁が受け入れ、ついに秦魏の戦は”秦軍の勝利”で終結を迎えた。
下山を始める魏軍だったが、廉頗は信に「こっちはこっちで話をつけておこうかのォ」と詰め寄る。
「輪虎の落とし前ってわけか・・・」と臨戦態勢を取る信に対し、廉頗は「儂や輪虎がそんなに器の小さい男に見えるか？」と尋ねた。
そして廉頗は”王騎の矛を受け取った”ということは、「大将軍を目指す者ということになる」「見るからにその低そうな身分でなァ」と言う。
身分なんて関係ないといおうとする信を遮り、大将軍になるために必要なものは、「百の”精神力”・”腕力”・”知恵”・”経験”・”幸運”」「それら全てを兼ね備えた趙国三大天と秦六将はかつて 正に完璧な時代を築き上げた」
「そんな儂らと貴様は本気で 肩を並べられるようになれると思っておるのか！？」と問う。
しかし、信は堂々と「俺はあんたらをぶちぬいて”史上最強”の天下の大将軍になるんだ！！」と宣言する。
その言葉を聞いた廉頗は、「若き頃の儂達の姿を思い出した」と笑みを浮かべ「貴様は儂らを追い抜くことも肩も並べることもできはしない」と続ける。
もはや伝説となったあの時代を抜くには、”伝説の塗り替え”しかないという廉頗。そして、「儂らでもなし得なかった大業をやってのければ歴史は必ず貴様らをあがめる」「中華統一じゃ」と告げたのだった。
「あまりにも現実離れした 大業だ」と訝る蒙恬だったが、政の野望を知る信は心中で”無理なんかじゃねェぞ”と思いを馳せていた。
「約束だぞ廉頗将軍 中華統一で 俺らがあんたらを超えた証だ」と迫る信に、「せいぜい精進せい」と輪虎の剣を信のもとへ投げた。
廉頗が去ると、蒙驁は「この戦ァっ 秦軍が勝利したぞォォォ！！」と勝鬨をあげたのだった。
羌瘣の旅立ち
秦軍の勝利が報告された咸陽は沸き立ち、信の功績を聞いた政は強く拳を握りしめる。山陽一帯の平定のため秦軍の多くがその地に残るが、負傷兵は帰国の途についた。
飛信隊も帰国組に入れられていたが、これは蒙驁のささやかな褒美でもあった。輪虎戦で重症を負った信は未だ眠ったままだったが、羌瘣は旅立つことを決意。
「今の私はどういう頭でお前たちと分かれればいいか分からない」と言葉を残し、一人夜明け前に飛信隊を離れる。一睡もできず歩き始めた羌瘣だったが、ふいに落とし穴に落ちてしまう。
「何のマネだ」と怒る羌瘣に、「罰だ罰 だまって一人で行こうとしたよ」と信たちは答える。そして、「どんだけ離れようとお前の小っせェ背中 俺達がガッチリ支えてるからな」と飛信隊全員で送り出したのだった。
論功行賞
戦に負けた廉頗は魏国を追放され、さらに楚国へと亡命。そのまま祖国の趙に戻ることはなく、楚で生涯の幕を下ろすことになる。
咸陽では論功行賞が始まり、第一功を蒙驁が獲得。敵参謀と総大将を討った副将・桓騎が第二功に選ばれた。
桓騎は政に対し”どんな面してやがる”と目線を向けるが、政の鋭い目つきに”温室育ちの木偶のくせに 何であんなに猛った光を帯びてやがる”と不思議に思う。
論功行賞は続き、信は輪虎を討った功績により”第三功”を手にする。緊張しぎこちない動きだが、政に「場を賑やかすのはその位で十分だぞ信殿」と声をかけられ緊張が解ける。
爵位や宝物の他、信は正式に千人将へと昇格。大きな歓声に包まれる中、無事論功行賞は終わった。
式典が終わり政と二人で語り合う信は、廉頗から出た”中華統一”の話をする。そして、未だ誰一人成し得たことがない偉業を成し遂げることを強く誓った。
独立遊軍・飛信隊
論功行賞から三か月、正式に千人隊となった飛信隊は”連戦連敗”で信は千人将の権剥奪の危機にされされていた。
新生飛信隊となり一勝もできない現状に苛立つ信だったが、昂は「やっぱり羌瘣副長が抜けたのが大きいんじゃないかな」と切り出す。
「あいつ一人抜けたからって戦力がそこまで無くなるかよ」と憤る信だったが、昂は「だってこれまで実際のところ羌瘣副長が作戦全部考えてたんでしょ」と返す。
その言葉を聞き、皆は目を見開き驚く。「今は楚水副長が作戦を・・・」と去亥が口にするが、信は”作戦は俺と渕さんが立てている”と告白。騒然とする隊員たちは、一様に”敗戦の原因はそれだ”と責めはじめる。
様子を見に来た蒙恬も驚愕し、「よく全滅しなかったな」と呆れかえる。急ぎ羌瘣に一度戻るよう意見も出るが、信は固く拒絶。他に代案もなく、途方にくれる。
見かねた蒙恬は、「飛信隊に俺の知ってるとびきりの”軍師”を一人呼んでやろう」と提案する。
飛信隊の軍師
蒙恬の紹介する軍師が、飛信隊の元へ到着するまで残り三日。信は「やっぱり気にくわねー」と、突然加入するよそ者に対する強い拒絶感を示していた。
蒙恬は弟を軍師として紹介するというが、”内部の絆が強い飛信隊”は部外者の介入に信以外の隊員も拒絶反応を起こしていた。
いよいよ後がない戦が始まるが、飛信隊は再び敗れてしまう。守備を大きく押し込まれる形になったところで、ついに飛信隊の元へ軍師が到着した。
飛信隊が取り囲む車の中からは、蓑を被り異様な恰好をした人物が現れ一同は騒然とする。しかし信は「何でお前がここにっ・・・」と驚く。
「ハハ やっぱり驚いたか」と被っていた蓑を脱ぐと、そこには貂の姿があった。
「助けに来てやったぞ 信」と声をかける貂に、信は「蒙毅ってやつの代理でお前が来た・・・？」と状況を把握。しばらく見ない間に成長した貂の姿に、「何かお前 女みてェな顔つきになっちまったな」とからかう。
すかさず「どう見たってそいつ”女”だろ」と去亥がいうと、「ワリ 信 実はオレ女の子」と貂は信に伝えるのだった。
貂が女だったことに信は大きな衝撃を受け落ち込むが、敵の魏軍が飛信隊の方へ向かっていると急報が入る。急ぎ指示を出す貂だったが、田永は胸ぐらをつかみ「何出しゃばってんだ小娘が」と恫喝。
「泣くぞあの娘」と尾平が気を揉むが、貂は「新参軍師がやっかみに遭うっての十分知ってるよ」「だけど今はそんなこといってる場合じゃないだろ」と応酬。
止めに入った信だったが、”いきなり隊の指揮を丸投げするわけにはいかない”と今まで通りの体制で戦うことを決める。
信と渕の作戦で動き出した飛信隊だったが、次々と敵に陣地を奪われていく。ついに連絡路を絶たれ他の隊の動静が不明になると、「やっぱり代わろう」と貂は切り出す。
これ以上の犠牲を出せない信は、ついに指揮を貂と代わることを決断した。
軍師・貂の初陣
魏軍の軍師・氷鬼は、飛信隊の本陣が忽然と姿を消した報告を受け、捜索網をしく。その読み通り貂たち本陣は、散っている仲間の隊を求め疾走。
大規模な包囲網を展開する氷鬼だったが、既に貂たちはその裏へと抜け出ていた。先の丘に本陣を置きなおした貂は、散っている各隊の居場所を地図上に示し捜索させる。
集結した飛信隊は指揮が貂に代わったことを知り、読みだけで自分たちを探し当てた貂に「あのガキどうやらただの小娘じゃねェみてェだぞ」と気まずい空気が流れていた。
貂は「軍師は必ず初陣でその”適性”を試される」といった、蒙毅の言葉を思い出していた。
日頃軽々しく扱う一駒には数百人の生の人間の命が宿り、”想像の上をゆく実戦の恐怖に呑まれ何もできずに潰される軍師見習い”は数多くいるという。
貂は熱気と殺意が風にのりまとわりつく息苦しさを感じ、”そうか、これが戦場の空気か”と気づく。一瞬その空気に呑まれそうになるが、“オレが戦場を呑んでやるんだ”と覚悟を決め隊員を配置につかせる。
迅速な立て直しに”参謀”が加わったことに気付いた氷鬼は、どの程度の軍師か第一手で推し測る。”反応を見る動き”でそれに気づいた貂は、受けて立つことに。
敵先鋒隊が動き始めたが、貂は迎撃せず全軍を待機させる。そこには、魏軍には見えていない”隘路”があったためだ。数本の道が一本にまとまっている道の”隘路”に入った魏兵は、小道に分散し狭路により衝突面が少なくなってく。
そのため敵一千に対し五百の兵力でも、飛信隊は十分に打ち勝つことに成功。混乱に乗じ一気に各所を叩くと、ついに隊長を討ちとった。
しかし魏軍師・氷鬼は”隘路”をすぐに攻略、貂は各隊を右の信の元へ集め極端な短期戦で敵本陣を狙う。力攻めで強硬突破をはかるが、徐々に練兵された氷鬼らの軍に呑まれていく。
本陣の足元には敵兵が迫るが、貂は敵守備の”力”が信の方へ偏るのをひたすら待ち続ける。「まさか隊長を”助攻”に使うなんてよ」と信が笑みをうかべると、貂はついに合図を送った。
次の瞬間、主攻の郭備兵が本陣に奇襲攻撃をしかける。貂は”巧な仕掛けで敵守備に穴をあけ、一撃必殺の奇襲攻撃を加える戦術”を利用し、見事軍師としての初陣を勝利で飾ったのだった。
敵将を生け捕りにするが、その時飛信隊の本陣は焼け落ちてしまう。「まさかあのガキ自分を犠牲にして・・・」と案じるが、「脱出経路くらい確保しとくよ 最初っからね」と貂が現れる。
その言葉に飛信隊は面食らうが、魏軍師・氷鬼は”こんな小娘に負けるなんて”と認められない。しかし信は、「お前は知恵比べでこいつに負けたんだよ」「飛信隊軍師 河了貂になァ！」と明言したのだった。
貂が正式に加入し、後方で補給作業に当たっていた副長・楚水が戻り”破竹の快進撃”が始まった飛信隊。”広域戦”をやり遂げ、”独立遊軍”としての形を作りながら更に強く進化していく。
祝宴を上げる飛信隊だったが、貂は一人天幕で作戦を考える。死人の数まで背負い策を練り上げる貂に、「そういう苦しみがあることを知らずに来たんならとっとと帰れ」と信は突き放す。
「そんな軽い気持ちでここに来たんじゃない 誰が帰るかよ」と憤る貂に、「仲間の死のつらさは軍師も兵士も変わんねェ」「みんなで共有して薄めて バカ騒ぎして吹っ飛ばすのさ」といい皆の元へ連れていくのだった。
東群
咸陽では敵対する政と呂不韋が見送る中、黒ずくめの旅団が山陽へと出立していった。山陽城に到着した黒旅団は、山陽周辺一帯平定に成功した軍・部隊と施政に当たる文官一同を大広間に集める。
黒ずくめの兵は秦国朝廷直属の特殊護衛部隊で、政府の要人・昌平君が山陽に派遣されていた。「今日のこの刻をもって 山陽は秦国の”東群”という名称に変わるものとする」と発表。
秦人一万の移住・秦の法の下に治められる東群では、承認しかねる原住民は強制退去が命じられる。
国土の奪い合いをするこの時代、奪った地はまたすぐに奪われるのが常だった。その地に自国民を移住させ群とする異例行為は、”この地を絶対に手放さない”という強い意思表示でもあった。
そして”山陽東群宣言”は、これから秦国が領土拡大に本腰を入れるという戦線布告でもあった。
その頃趙王都・邯鄲では、李牧が軍を興す準備をしていた。そして、”燕国”攻めを龐煖に任せることを示唆するのであった。
キングダム23巻感想・考察
奇しくも廉頗の示した伝説の時代を抜く方法は、”誰もなし得なかった中華統一”と政の夢と一致します。
誰もが無理だと考える”中華統一”ですが、輝かしい黄金時代を戦い抜いた廉頗と今を戦う政には決して無謀ではない目標に映っていることがわかりますね。
偉業を成し遂げようとするレベルまで達した人間には、きっと同様の風景が見えているのでしょう。
昌平君の軍師学校で学んでいた貂でしたが、飛信隊が窮地に追い込まれたことにより急遽軍師として赴任してきます。
机上の策士だった軍師学校時代と異なり、動かす駒には生身の人間の命が宿ることを再認識させられますね。
戦場の空気の呑まれかける貂ですが、”巧な仕掛けで敵守備に穴をあけ、一撃必殺の奇襲攻撃を加える戦術”で見事初陣を勝利で飾り、その後も破竹の勢いで飛信隊を勝利に導きます。
戦場では戦闘力が一番の武器ではありますが、やはり策を練り無駄なく遂行する軍師の存在は欠かせません。初陣で見事その“適性”を示した貂の今後の活躍も、見逃せませんね。
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