趙李牧戦敗戦後、閼与城で王翦将軍は立て直しを図る。一方韓前線南陽城では、羌瘣の策で無血開城に成功。
昌平君の立てた三本柱による韓王都新鄭攻略が始まる、第74巻のあらすじや感想を調査しました。
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- 昌平君は一本目の柱”戸籍作り”を完成
- 羌瘣の策で南陽城の無血開城に成功
- 謄は南陽城で秦韓”理想郷”作りに挑む
キングダム74巻ネタバレあらすじ・表紙も確認！
| 作者 | 原泰久 |
| 出版社 | 集英社 |
| あらすじ | 秦の戸籍作りが進む中、閼与城では王翦将軍が 軍の立て直しを図る。 前線では玉鳳・楽華隊が魏・趙の援軍断ちをし、 飛信隊と謄軍が韓・南陽城攻めを開始。 羌瘣の策で無血開城に持ち込むも、城内は秦軍 に対する恨みが渦巻いていた。 法で統治する長官・剛京と謄・元城主龍安は対立 するも、謄は秦人韓人交わる”理想郷”を目指す ことを宣言。南陽城の民も心を動かされ始める。 練兵が進む謄軍・飛信隊は、ついに王都新鄭攻略に 動き出す。 |
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大将軍の軍勢
全秦人の戸籍を作るという途方もない国策が発せられ、文官たちが騒ぎ出す咸陽。
北部の手当に国庫を開かなければならない苦境にも関わらず、莫大な資金が必要な戸籍作りに憤る李斯。しかし、夏までに完成させる計画書を作り命がけの覚悟を見せる。
咸陽が騒がしく動く中、後に”大事”に繋がる”小事”が起こっていた。秦との同盟のため来朝していた、人質である燕の太子が勝手に帰国してしまったのだ。
閼与では王翦軍が立て直しを図るが、”崩壊したといっても過言ではない軍の復活”のメドはそう簡単には立たなかった。
臣たちは次に李牧に勝のは”十中八九”王翦であると告げるが、王翦は「十中十 私が勝つ」と断言。そして「李牧は討とうと思えばいつでも討てるのだ」と告げる。
李牧には”最大の弱点”がありそこを突けば容易に殺せるという王翦に、「それが本当なら なぜそうされなかったのです」と問う倉央。
「そんな弱点をつかずとも 真っ向から戦って勝算段があったからだ」「買って奴の首を刎ねるか もしくは配下にするつもりであった」という王翦に、倉央は「亜光も田里弥も死にましたぞ」と怒りを露わにする。
その頃飛信隊では、楚水と渕が五千将に昇格。固辞する渕だったが、信は「飛信隊を支えてんのはずっと渕さんなんだよ」と後押しする。
そして、羌瘣は将軍に昇格。飛信隊から将軍が排出されたことにより、貂は大将軍への道が更に近づいたと明言。
近く韓攻めを始めることを知る信は、”一国を滅ぼす戦”を控えることに思いを馳せていた。
三本目の柱
秦軍が韓攻めに動きだす始皇16年が始まった。昌平君の一本目の柱・戸籍作りが完成の目途がたち、二本目の柱・戸籍を利用して飛信・玉鳳・楽華を”主軍”にする準備が整いつつあった。
そしてその二本の柱を使って”韓を攻め滅ぼす”三本目の柱を立るため、謄は信を呼び寄せていた。
謄は”韓を滅ぼし得た力”で再び李牧へ挑み、趙を滅ぼす作戦を明かす。信は「それじゃ韓はただの”踏み台”みたいじゃねェか そんなに簡単に滅ぼせるのかよ」と噛みつく。
「それが残念ながら全く簡単ではない」と答える謄。韓は七国中最小であるが、侵略拠点を作らせないため後ろの趙と魏が大軍で援けを送るためである。
そのため今回は玉鳳と楽華が趙と魏の援軍を断ち、その間に韓を滅ぼす計画だ。そして昌平君は、その期限を二年と定め現場の将たちにも知恵を出し合うよう命を出した。
咸陽ではついに戸籍が完成し、政は昌平君を労うとともに「中華統一まで共に走り切るぞ！」と第三の柱の着手を示唆。ついに昌平君も、本格的に第三の柱始動へと動き始める。
戸籍を使って秦国内には超大軍が興り、列国は大騒ぎとなった。早くも”韓攻め”と”援軍断ちに”気付いた魏の呉鳳明は、急ぎ洛紫城へ出陣命令を出す。
電光石火
魏軍の援軍を断つため、王賁率いる玉鳳隊は水軍で黄河を渡っていた。陸で待ち構える魏軍だったが、玉鳳の先鋒隊の働きで王賁たちは上陸に成功。電光石火の速さで洛紫城を陥落させた。
慌てる魏・景湣王だったが、呉鳳明は”軍の準備をしつつ王都新鄭まで迫るのを見守る方が利が大きい”と進言。そしてもし新鄭が包囲されれば什虎城より出陣し、秦軍を滅ぼす策を出す。
一方”鄴”と”橑陽”の間に位置する小都市”黄都”の一帯には、楽華軍五万が展開。趙軍の援軍を止めるべく、準備を始めていた。しかし趙の李牧も呉鳳明同様、秦の動きを静観する命を出していた。
玉鳳隊と楽華隊の動きが自国を狙ったものだと気づいた韓王都・新鄭では、西の用地”南陽”に飛信隊六万が侵攻してきている急報が入る。
行軍する飛信隊の渕は「謄将軍の軍はなぜいないのですか？」と問うと、信は「まずは俺達だけだ」と答え羌瘣の作戦を明かす。
戦術会議で羌瘣は”兵を失いたくないのなら 戦わなければいい”と発案。隆国らはあしらうが、謄は「同じことを考えていた」と同意していた。
その頃南陽城では韓軍第二章の博王谷が守り、一帯の民が入ると城門は固く閉ざされていた。
南陽が揺るがぬことを確信する新鄭の臣たちだったが、韓第一将・洛亜完は「場合によっては城を捨て他に兵力を集結させて対応してゆくのが上策です」と進言。
訝る公主・寧だったが、景湣王は「力劣る国は 失う勇気と 失ってはならぬ所に力を集結する”知恵”が必要なのだ」と諫める。しかしそこへ、飛信隊の後ろから謄軍十万が出現した急報が入る。
迎撃のためには新鄭から十万規模の軍を出す必要があり、決断を迫られる韓宰相張は”新鄭軍の全てで謄軍に挑む”・”南陽戦の静観”・”南陽の軍全てを新鄭に引き下げる”三つの選択肢を示す。
決断に迷う景湣王だったが、更に謄軍の後ろから十万の大軍が南陽へ近づいている急報が入り南陽切り捨てを決断。南陽城主・龍安にも”軍を全て新鄭へ移す”旨を知らせる鳥が飛ばされた。
無血開城
知らせを受けた南陽城では切り捨てられた南陽兵が激怒するが、城主龍安は冷静に”無血開城”を決断。南陽の要人を一人でも多く逃がすよう、指示を出す。
新鄭へ引き上げる南陽の兵を見た信は、本当に羌瘣と謄の策で無血開城したことに驚きを隠せない。
謄は出陣前咸陽で、昌平君に”十万の軍を興して我らの後を追わせてほしい”と依頼。「今は兵士十万を生むことは出来ぬ」という昌平君に、謄は「兵士でなくてよい」「そう見えればいいだけだ」と伝えていた。
その言葉通り秦軍は、”戸籍を使い老人たち含めたその上の世代を十万”を招集し大軍を興す。そして、見事刃を交えることなく無血開城を成し遂げたのだった。
六将・謄の責任
無血開城に成功した秦軍は、南陽城の城主龍安と対峙。謄は兵の半分は城外へ野営させ、城内には初従軍でない古参兵のみとした。
抵抗する南陽城の住民は城壁に”韓”の国旗を掲げるが、謄は咎めることも降ろす必要もないという。そして下げた旗全てを掲げなおし、秦の旗と並べて立てることを提案する。
しばらく南陽に留まる命を出した謄に録鳴未は訝るが、”機が熟すまで”と諫める。貂は無血開城で城は取れたものの、「一方で問題を先送りしたのも事実だ」とつぶやく。
隆国も”犠牲を極力抑え”新鄭の総戦力に勝利するには、”練兵”が必要だと断言。そして新鄭の洛亜完率いる王都軍に、圧倒的力の差で打ち勝つ必要があるという。
その頃謄は、南陽城主・龍安と城内を回っていた。龍安が暴政で治めていたら、首を斬って民を解放する形で容易に統治へ向かえた。しかし実際は逆で龍安は名君の類ゆえ、謄はその信頼の厚さを利用する方が賢明だと判断。
「あの旗といい本当に心優しいお方だ」と龍安は伝えるが、「そういう話ではない」「あの旗は我ながらいい考えかと思ったが やはり浅い」と答える謄。
謄は掲げられた二国の旗は侵略され恐れおののく者には安堵の”徴”となったが、怒りと反発の心に支配される者たちには”騙されるかも”と余計に嫌悪を深めさせる”徴”となりかねないと告げる。
そして「新鄭攻略の鍵はこの南陽にあると思っています」と、龍安に打ち明けたのだった。
その時咸陽から、南陽の長官を務める剛京が到着。並べられた”韓”と”秦”の旗を見て激怒し、秦の役人たちに逆らえば処罰すると南陽の民に告げる。
そしてただちに龍安に対し斬首の刑を執行しようとするも、謄に「不当に殺すなと言っておるのだ」と咎められる。龍安も覚悟を決めるが、謄は「龍安を斬首にしようとする者はこの場で謄が首をはねる」と宣言。
剛京から「私を斬れば後日間違いなく貴殿は”斬首”となるぞ」と脅されるが、謄は「それでも龍安は殺させぬ」と断固拒否を貫く。
「なぜそこまでした龍安を救おうとする 龍安は何か特別な存在だとでも？」と問う剛京に、謄は「龍安ではない 南陽が特別だから止めているのだ」と答えた。
韓の民は不安の中、秦軍の動向を”南陽の動きを見守っている”ことを挙げ、「民から信頼の厚かった城主を公開斬首し、なじみののない秦法で厳しく民を縛り圧政を敷けば新鄭の民はどう感じると思う」と謄は剛京に尋ねる。
「韓の機嫌を取って我らは介入せず 南陽をそのままにさせておくとでも言うのか」と訝る剛京だったが、謄は「落とした地の治め方も新しいものにすべきではないのか」と提言。
そして、「南陽を秦と韓の人と文化が友好の下入り交じった”理想郷”に作りかえる」「それが叶えば 南陽は中華統一後に目指す世界の姿の一つの”試金石”となる」と明言した。
もはや武将が考える類の話ではないと録鳴未たちは訝るが、謄は六将には「”戦争の責任”も不随すると考えている」と告げる。
中華統一への道中ならば、踏みしだくのは中華全土。その責任は全中華の民の生き方の責任となると明言する謄に、貂は昌平君が”謄がこういう視点を持っている”ということを知っていると確信。
謄の話の筋は理解したものの、剛京も長官としての責務を全うすると宣言。埒が明かない状況に、隆国が”この場で長官と六将の立場どちがら上か咸陽の判断にゆだねる”としこの問題を預かることを提案。
謄と剛京が納得したことで、一旦現状のまま南陽は治められることとなった。
南陽の民
早馬が戻り咸陽は六将の立場が上と判断、謄は剛京も南陽が”理想郷”となるよう前城主・龍安と協力し合うよう命を出す。
練兵に入った飛信隊だが、烏合の衆の兵の訓練は中々進まない。そんな中、信は一人謄から出された”宿題”を考えていた。
謄は”南陽の鍵は謄軍より南陽の民に近い飛信隊が握っている”と考えており、”飛信隊なりの南陽の民との関わり方”を考えるよう信に伝えていた。
飛信隊の寝食の世話を任された南陽の民・温形は区画全てを空けるが、信は住人を元に戻すよう願い出る。
せめて一緒に住むことを信は提案するが、我呂に「ここの住人達が飛信隊にどんだけびびって気を使ってんのかわかんねーのか」と諫められる。
そして「暴れようが暴れまいが近くにいるだけで俺達は怖いんだよ」血のに臭いが染み付いた自分たちは「かつての桓騎らと変わらない」と現実を突きつけられた信。
「少し考えさせてくれ」と告げた信は、南陽の民と共に夕食をとることを提案。しかし貂は、「まだ何一つ信頼関係が出来ていないのに 食事に毒でも入れられたらどうすんだよ」と警戒する。
それでも信は、武器の持ち込みを禁止し夕食会を決行。その姿を見た温形は、女子供も参加する決断をする。
夕食会が始まるも、南陽の民は怯えたまま飛信隊とは交わろうとしない。中には飛信隊に攻撃を加えようとする民もいたが、皆見て見ぬふりをしてやり過ごしていた。
そんな南陽の民と飛信隊を見ていた信だったが、突然温形に刃を向けられた。騒然とする一同だったが、信は冷静に「何で俺の命を狙った」と尋ねる。
温形は二十年前、秦兵に娘と孫を”何度も犯し”あげく”腹を裂いて無残に殺された”過去を明かす。二十年も前でありながら、温形はいまだ毎晩その姿を思い出していた。
”同情はするがその秦兵は飛信隊ではない”と刀を捨てさせようとする田永だったが、信は「何も間違ってねェ」と告げる。
”他の住人まで巻き込むから我慢しろ”というのは乱暴だとする信に、我呂は「考えが甘すぎる」と諫める。しかし、信は「力で制圧したら それは支配だ」「秦王はじーさんみてェな悲劇が起きない世界を作りたいんだ」と皆に伝えた。
「そのためには今の俺達は難しいことをしなくちゃならねェ だから俺はこの刀を無理矢理取り上げることはしねェ」そして、”前に進めるようになるまで待つ”と温形に告げる。
秦の将軍・信への刺殺事件を咎められると怯える南陽の住民たちだったが、それもなく一様に驚き安堵する。このことにより、南陽内にいる飛信隊と住人達の距離が少しだけ近づいたように感じられた。
羌瘣は信の判断の甘さを指摘するも、「あの夜のことはあれでよかったと思うよ」と告げる。
練兵が続く飛信隊では、長身の邪毛族や馬を自在に操る俔馬族・戦闘に優れる凡冥の一団が集まるも指導役の指示を聞かず困りはてていた。
とにかく隊長・信の腕前を見せろとせがむ凡冥の一団らに対し、来る新鄭攻略のため飛信隊を全力で鍛え上げたい信は自ら練兵に臨む。腕にの自信のある凡冥らだったが、信の一刀に実力の違いを見せつけられてしまう。
練兵が進み飛信隊の軍編成が完成した貂は、干斗や昂を百将に昇格。そして尾平・澤・中鉄を三百将、竜有を五百将、田永・竜川を千人将、沛浪・田有・我呂・満童を二千人将、崇原を三千人将に昇格させる。
五千将に渕と楚水を据え、羌瘣軍二万と合わせた合計六万の新編成飛信隊が完成。新鄭攻略に備え、本格的な練兵を始めた。
その頃南陽城内では剛京の南陽民に対する厳しすぎる処罰に対し、龍安は温情を願い出ていた。「儒家は己の加減により”不公平”を作ってゆく」と断じて譲らない剛京に対し、不満を口にする元南陽城の臣たち。
しかし龍安は「我らが反発しては南陽の住人達が絶対の秦法の下での暮らしを受け入れぬ」と、まずは自分たちが理解を示す必要性を示唆する。そんな龍安を尻目に、城下では住民に暴行した謄軍の兵を南陽の民が刺す事件が勃発。
厳罰を覚悟する南陽兵と龍安であったが、剛京は”暴行した謄軍の兵”を斬首の刑に処した。そして、「法の下に韓人か秦人一般人か武人かなど一切関係ない」「等しく平等なのだ」と断言。
剛京は被害に遭った家族へは手厚い謝罪金を出し、秦軍には末端の兵まで軍律を徹底させることを命じる。
こうして城内では大小の問題が起きては解決することを繰り返し、南陽の歩みは”秦人と韓人の双方が望む形へ進んでいる”ように謄の目には映っていた。
やがて年が明けいよいよ”機”が熟した紀元前230年、つに中華全土が注目する韓王都新鄭攻めが始まることとなった。
キングダム74巻感想・考察
呉鳳明は洛紫城を落としたのが王賁だと知ると、新しい時代が動きだしていることを痛感します。
秦に対し共に”静観”の指示を出した呉鳳明と李牧にとって、新しい時代の代表でもある信・蒙恬・王賁が見逃せない存在となっていることがわかりますね。
南陽城に向かう信たち飛信隊ですが、六万の軍勢という以上に遅い行軍です。それにはカラクリがあり、後ろに続く秦軍は”戸籍で集められた老人兵”であるためでした。
行軍の遅さに韓軍も気付きますが、その理由にまでは辿り着けていません。もし辿り着ける者が韓の上層部に存在すれば、南陽城の無血開城は実現しなかったことでしょう。
南陽城を落とした謄は、「南陽を秦と韓の人と文化が友好の下入り交じった”理想郷”に作りかえる」「それが叶えば 南陽は中華統一後に目指す世界の姿の一つの”試金石”となる」と明言します。
もはや武人の領域を超え文官の目線も据える謄に対し、信は”大将軍になる”には謄同様の目線が必要だと悟ります。昌平君はこのような意識を持たせるため、王賁や蒙恬でなく信を謄の下につかせたと予想することもできますね。
無血開城した南陽城を治める長官・剛京は、厳しく南陽民を処罰します。龍安は温情を申し出ますが、一切の”法の下”の妥協を許しません。
その”法の下”は全ての民に平等であり、罪を犯した謄軍の兵も厳しく処罰されます。剛京の厳しさは法家である故であり、決して南陽民のみに圧政をしこうとした訳ではありませんでした。
龍安や南陽民はそれに気付き始めますが、閉ざされた城内の変化を知らぬ韓全土は”ただただ酷い仕打ちを受けていないこと”を祈るしかありません。
こうして新たな一歩を歩み始めた南陽城は、この後続く韓王都新鄭攻略の大きな鍵を握ることに。次巻75巻では、本格的に大戦が動き始めます。
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